ネクストビジョン有馬です。
今回は「交渉」というテーマで少し語ってみたいと思います。
交渉とは
交渉という言葉には「駆け引き」や「主導権争い」のようなイメージが付きまといがちですね。
しかし、交渉の本質は、どちらかが勝って終わる勝負ではありません。
それは、自分の都合を押しつけることでも、相手の言い分をすべて受け入れることでもないのです。
本当に効果的な交渉とは、「違いを見つけ、その中にある共通点を探り、互いに納得できる場所に着地すること」。
以前、社外パートナーとの納期交渉の場面で、こちらの希望納期と先方の作業状況が大きく食い違っていました。こちらはクライアントの都合で前倒しを強く希望し、先方は人的リソースの制約で対応できないと主張。交渉は一時、平行線でした。
▷ 実例:納期交渉で見えた“気持ちの接点”
そのためには、自分の意見を主張する力だけでなく、相手の立場や想いに耳を傾ける力も求められます。
そこで、単に「〇日までにお願いしたい」ではなく、「この案件は当社にとって来期の契約更新に関わる重要な意味がある」という背景を丁寧に伝えました。一方で、先方のチームが新メンバー教育で多忙であることも理解し、その上で「少し工程を分割する形なら可能か?」と提案。
結果的に、前倒しに近い形で工程を組み直すことで合意に至り、両者の都合が最大限尊重された結論となりました。重要だったのは、立場や条件の“違い”を並べるだけで終わらず、その奥にある「相手が何を大切にしているか」に触れようとしたことです。
▷ 違いの整理だけでは足りない理由
多くの交渉で陥りがちなのは、「違いをリスト化し、共通項だけを抽出する」というテクニカルなアプローチです。それ自体は有効ですが、それだけで心の納得感が得られるとは限りません。人は「理解された」と感じたときこそ、妥協や協力に前向きになれるのです。
交渉を「人との関係を築く手段」として捉えると、見えてくるものがあります。相手が何にこだわっているのか、その理由にどれだけ共感できるか。そこに思いを寄せた提案は、ただの妥協案ではなく、共創のスタートになります。
▷ 交渉は信頼の積み重ねでもある
交渉において、短期的な利益だけを追うと、長期的な関係が損なわれることがあります。逆に、相手を尊重し、気持ちを通わせる交渉ができたとき、今後の協力体制は格段に強くなるものです。
ある意味で、交渉とは「信頼の強度を試される場」なのかもしれません。条件のやりとりだけでなく、「人として向き合えるかどうか」が結果を大きく左右するのですね。
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